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研究活動
「母親の『子育て日記』分析による子育てモデル作成の試み」
國枝俊弘((株)シタシオンジャパン) 相馬淳子((財)ソニー教育財団 幼児開発センター)
key words:子育て、子育てモデル、乳幼児
【研究の目的】
「母親の状態」「母親の育児行動」「父親の態度」など個々の要因や、相互の関連性についての研究は多く見られるものの、統計的手法による検証は十分とは言えない。もしこれら要因の関連性を包括する因果モデルが構築されれば、親子関係の問題に対し、より根元的な解決策を示唆することが期待できる。そこで本研究では、日記形式で収集した、日々の夫婦関係、親子関係のデータ(生後1ヶ月~24 ヶ月)を元に、要因間の関連性を示す”子育てモデル”を構築することを目的とする。
※本データは(財)ソニー教育財団 幼児開発センターの研究成果の一部を報告するものである。
【方法】
調査対象者
都内在住の生後1 ヶ月の第一子を持つ夫婦16組(調査開始時)。
調査時期
1999 年より実施。現在も調査を継続中
調査方法
母親が評価者となり、調査開始時より、その日の行動、状態、出来事などを、日記形式に用意されたチェック項目について毎日評価していく
評価項目
「母親の状態」「母親の育児行動」「父親の態度」を視点に作成された22 項目
分析対象データ:生後1 ヵ月~24 ヵ月(16 名×24 ヵ月、延べ評価日数10734 日)
【結果と考察】
分析の手順
分析は、”評価項目の構造化””モデルの作成”2ステップに分けられる。評価項目の構造化については、評価項目の因子分析を行い、評価項目の構造化を試みた。結果「1.母親の育児行動」「2.父親の育児行動」「3.夫婦のコミュニケーション」「4.母親の情緒の不安定」「5.母子の社会的行動」の5因子が抽出された。
モデルの作成については、因子得点を月齢ごとに因子間の相関分析を行い、相関係数に基づいてモデルを作成した。
本研究では、因子間の因果関係を明らかにするために、当日間の因子間の相関分析に加え、当日の因子1と昨日の因子2の相関といった時間交叉相関分析を行った。モデル作成あたり当日間の相関係数より時間交叉の係数が高い場合は、後者を採用し、パス(矢印)を表示した。
全体の傾向を見たときに、子供の成長時期によって因子間の相関の程度が異なること明らかとなった。例えば「母親の育児行動」と「夫婦のコミュニケーション」は負の相関が見られるがこの傾向は生後4か月までに集中していることから夫婦のコミュニケーションが母親の育児の阻害要因になるのではなくコミュニケーションをとる余裕がないことによるものとも考えられる。また16 ヶ月以降で「母親の育児行動」と「母子の社会的行動」に相関が見られるのは、子どもの外出する機会が増えたためと考えられる。今後、この結果をもとに、同時に収集した自由記述データや母親の特性、子供の成長のなど、個々の家族の特性を明らかにし、より精緻化したモデルの構築を試みる。
(KUNIEDA Toshihiro,SOMA Junko)